HR業界とは?今後の業界予測や転職時に求められるスキルを解説
耳にする機会が増えた「HR」という言葉。なんとなくはわかっていても、いざ説明するとなると難しいのではないでしょうか。特に人事に関わっているビジネスパーソンとっては、知らないと企業の損失にもなりかねないHR業界の知識。そこで本稿では、最低限おさえておきたい「HR業界とは?」「人材業界との違い」だけでなく、将来の業界予測なども解説していきます。
目次[非表示]
- 1.HR業界とは?
- 1.1.人材業界との違い
- 2.HR業界の4つの役割
- 2.1.採用
- 2.2.人材育成
- 2.3.人事・労務
- 2.4.システム・業務支援ツール
- 3.HR業界の必要性
- 3.1.企業の人手不足解消に貢献する
- 3.2.企業の人材定着化に貢献する
- 3.3.企業の働き方の多様性に貢献する
- 4.今後必要とされるHRテックとは
- 4.1.HRテックの活用例
- 5.HR業界の市場規模と今後の予測
- 6.HR業界への転職で求められる人物像・スキル
- 6.1.営業経験(無形商材)
- 6.2.経営者感覚
- 6.3.労務関係の専門知識
- 7.まとめ
HR業界とは?
企業の成長を足踏みさせる人材不足。解消に向けて注目を集めているのがHR業界です。HRとはHuman Resourceですから、ストレートに言えば人的資材=人材のこと。とはいえ、ただ単純に応募者の母集団形成をするということではなく、人材に関するあらゆるステージで人事部に並走することが特徴です。最上流ともいえる採用計画からスタートし、採用、就業後の育成という一連の流れを通して、定着・活躍までを支援しています。
直訳すると「人材」であることから、人材業界と混同されることも多いHR業界。しかし人材業界が採用の一点に特化しているのとは異なり、より幅広くかつ長い期間にわたって企業の人事部をサポートする点が特徴です。具体的にどのような違いがあるのか、ご紹介していきます。
人材業界との違い
人材に関する支援をするという点においては、両業界は共通しています。違いは「誰を支援の中心にしているか」です。人材業界は就業を求める個人を中心に、対してHR業界は企業の人事部を中心に据えています。
HR業界 |
人材業界 |
|
---|---|---|
概要 |
人材に関するサービスを幅広いフェーズで提供する業界 |
求職者・企業両者に対してマッチングサービスを提供する業界 |
サービスの軸 |
企業の人事部 |
就職・転職活動をする個人 |
主なサービス |
採用 |
人材派遣 |
人材業界が行うサービスは4種類。①人材派遣②人材紹介③求人広告④人材コンサルティングです。いずれも就職・転職したい人に情報を提供し、企業との縁をつなぎます。就職・転職が完了すれば、そこで人材業界の出番も終わり。対して採用後も関わり続けるのがHR業界です。採用後の育成や研修をはじめ、実際に勤務を開始してからの評価なども担います。人事部が人材に対して行う一連の業務をサポートすることで、採用だけでなく人材の定着に向けた効果も期待できます。
HR業界の4つの役割
新たな採用の主役となっていきそうなHR業界は、どのような役割を負っているのでしょうか。メインとなる以下の4つの役割について、次項で詳しく説明していきます。
●採用
●人材育成
●人事・労務
●システム・業務支援ツール
採用
企業は当然ながら、新卒・中途入社の正社員だけでなく、派遣社員、アルバイトなども雇用します。そこで問題になるのは、どの雇用形態で何人の従業員を採用するのか。その判断から、HR業界の役割はスタートします。というのも、採用は事業計画に基づいて実施することだからです。
また、求める人物像が異なればアプローチの方法や訴求する内容も異なるもの。例えば新卒なら将来の成長性を訴求する、経験者にはスキルを生かしたやりがいある業務内容を訴求する、アルバイトには働きやすい条件を訴求するといった具合です。適切な打ち出しをするためには相応の知識が必要なので、人事部にとっては頭の悩ませどころ。それだけに、会社の成長に寄与する人材を採用するためには、ノウハウのあるHR業界が大きな役割を担っていると言えます。
人材育成
採用が成功したからといって、すぐに現場での活躍が期待できるわけではありません。そこで、業務内容や役割ごとに必要な知識を定着させるための研修などが必要です。しかし、よほどの大企業でなければ、各企業が自社なりの研修制度を築き上げるのは難しいもの。そのような場合に、HR業界の人材育成サービスが役立ちます。
例えば、新卒であれば社会人としてのマナーなどから教えることが必要かもしれませんし、そうでなくても企業の一員として同じ目標に向かって働いていけるように育てていく必要があります。また、育成のゴールも、社員ごとの役割によって異なってくるでしょう。このように業務内容や人材、目標にあわせてベストな研修を分析して組み上げるという役割も担っています。
人事・労務
既存の社員への対応もカバーするのがHR業界です。従業員が快適に働き、自社に対しての信頼を高めていくためには、人事査定や福利厚生の整理も重視すべきポイント。近年では働き方改革やダイバーシティーといった課題もあり、企業に求められる姿勢が大きく変化しています。中には個々のプライバシーに関わるセンシティブな内容も含まれ、通常業務にも対応しながら、すべての情報を集めて精査していくのは非常に難しいものです。
そのような分野だからこそ、HR業界に委託することで人事部の負担は大幅に軽減されます。また待遇の改善は従業員のロイヤルティを高め、結果として離職を防ぐことにもなるため、外注することは有効な投資と言えるでしょう。
システム・業務支援ツール
HR業界の中には、業務効率化に向けたシステムや業務支援ツールの開発・提供まで行っている企業もあります。一見、人材とはやや距離のある分野にも思えます。しかし人材の採用・育成は企業の発展に向けた施策ですから、業務の効率化と同じ目的の下に行われているといえます。システムの機能としては、事業効率を上げて人事部の負担を軽減するものです。
具体的には、採用の段階で情報を整理したり、育成のシステムを構築したり、適性検査を通じて適材適所の人員配置をスムーズにしたりといった価値を提供しています。システムの詳細な仕様は提供する企業ごとに異なり、それぞれ独自の得意分野を持っていますので、解消したい課題と照らし合わせて最適なものを選ぶことになります。
HR業界の必要性
従来の人材業界に対して、より幅広い領域においてサポートが可能なHR業界に対する需要は右肩上がりになっています。その理由は、以下のような経営課題の解消に寄与できるのです。
●企業の人手不足解消に貢献する
●企業の人材定着化に貢献する
●企業の働き方の多様性に貢献する
企業の人手不足解消に貢献する
国データバンクが2021年1月18日~31日に実施した「TDB景気動向調査」では、35.9%の企業が正社員の人数を「不足」と回答しました。短期的には緊急事態宣言の影響で減少しているものの、長期的には増加傾向です。コロナ前の2019年は53.0%と、2009年の16.2%から10年で3倍以上。そのためコロナ渦が収束すればまた上昇傾向になることが予想されています。
そこでHR業界に期待される役割は、自社にフィットする人材を獲得することと、業務の効率を改善すること。この2つは、人手不足解消に直接関係してきます。社員を採用し、育成して、業務環境を改善するサポートもするという、多岐にわたるサポート機能を持ったHR業界へのニーズは、人手不足の深刻化にともなって、より高まっていくでしょう。
企業の人材定着化に貢献する
「雇用動向調査」に基づいて平成27年版の中小企業白書に掲載された調査結果によると、常用雇用者が100人以上である大企業の離職率は10%~13%台で推移しています。つまり、従業員100名の企業であれば、年に10人~13人の人材を失っているということ。会社を知り尽くしたベテラン社員の離職はもちろんのこと、コストをかけて採用した人材の早期離職も大きな損害となります。これは採用コストを無駄にしたくない企業にとっては大きな課題。
その問題を解消するのが、先述した待遇の改善です。労働環境を良くしたり、メイン業務以外の手続きを軽減したり、さらには長年働くイメージがしやすいような研修制度を整えたり。待遇改善によって従業員の仕事に対する集中力をアップさせ、会社への満足度を高めることが、結果的に人材の定着につながっていくことになります。
企業の働き方の多様性に貢献する
家族の形態の変化や価値観の多様化により、働き方にも多様性を求める声が大きくなっています。その傾向は、内閣府が1995年に行った「今後の新しい働き方に関する世論調査」ですでに表れていました。例えば、1日や1週間ごとの労働時間の長さだけを固定して、始業・終業の時間は自主的に決めるのがよいと答えた人は67.7%。また、住宅地に近いサテライトオフィスが「必要」「ある程度必要」との回答は合計で67.5%でした。
働き方の柔軟性を福利厚生と捉え、企業はテレワークやフレックス勤務を推進しています。とはいえ導入が進んでいるのは、まだまだ大企業が中心。規模の小さい企業ほど遅れている実態があります。しかし今後はHR業界のサポートを受け、多様化への障壁をクリアできる企業が増えていくでしょう。
今後必要とされるHRテックとは
どの業界でも注目されているように、HR業界でもテクノロジーの利用が重要度を増しています。その理由は、これまで繰り返し述べてきたように、企業の業績アップに向けて効率化が欠かせない課題だからです。個人の感覚や労働時間の長さに頼る業務スタイルから脱却し、AI(人工知能)やビッグデータ、クラウドサービスの導入で採用や労務の管理をスピーディーにする必要があります。
AIやビッグデータの活用といっても、利用者の誰もが専門知識を持っている必要はありません。例えば、在宅勤務中の従業員の出退勤を管理するのもHRテックでできる労務管理の一つです。導入しやすいようにインターフェイスが工夫されていたり、企業ごとのニーズに合わせてカスタマイズできたりと、急速にサービスの開発が進んでいる分野。活用していくことで、人事部の業務効率化においても大きなメリットがあります。
HRテックの活用例
では、実際にはどのような場面でHRテックが活用されているのでしょうか。
●採用業務の効率化
応募者を一元管理ができるため、フィルタリングをかける、ラベルをつけるなどの機能を活用すれば効率化が見込めます。また、事前に不合格の条件などを設定しておけば、候補者を選別する時間の節約にもなります。
●人材育成
育成は一対一で実施していくとコストが大きくなるもの。それを解消するのがeラーニングを活用した学習管理システム(LMS)です。説明する内容が毎回同じであれば研修動画を作成するなどして、効率化ができます。
●人材管理
採用段階だけでなく、人材管理の段階でもデータ化は効率アップにつながります。評価を印象のみに頼ることなく、データ化しておくことで成績の推移などを見える化し、管理もしやすくなります。
このように様々なステップにおいて効率化が望めるため、人事分野において、HRテックの需要は近年ますます高まっています。
HR業界の市場規模と今後の予測
時代の要請を受けて成長しているHR業界。中でも特筆すべきはHRテック領域の拡大です。市場調査を行っているシード・プランニングによると、2019年におけるHRテックの市場規模は1199億円。前年比130%という伸び率を記録しました。しかしその勢いはとどまることなく、今後はさらなる伸びが見込まれています。同社は、2023年には2019年の2.1倍となる2504億円まで市場規模が伸びると予測。
その背景にはさまざまな要因があります。まず採用や人材配置においては、人材と企業のマッチング機能を備えたサービスへの需要が広がっていること。また人材開発・組織開発領域では、ITテクノロジーを軸に、これまでにない需要が拡大していくこと。加えて人材管理の面では、勤怠・労務・給与の管理業務を効率化するためのクラウドサービスの浸透が進んでいること。これらがより多くの企業に受け入れられることで、今後も市場全体が大きく伸びると予測されています。
HR業界への転職で求められる人物像・スキル
最後に、HR業界で活躍するには、どのようなスキル・性質が必要かをご紹介していきます。このあと、それぞれについて詳細を見ていきましょう。
●営業経験
●経営者感覚
●労務関係の専門知識
営業経験(無形商材)
歓迎される経験として主なものは、法人営業です。その理由は、高いコミュニケーション能力が必須だから。基本的には企業に出向いて、先方の社員と対話することになります。といっても、相手は一般社員から役員までポジションの幅が広く、好まれる対応や求められる情報が異なります。
加えて企業への応募者や、育成を依頼する講師など、さまざまな立場の人と正確な意思疎通をしたり、調整をしたりする必要も出てきます。そのため、法人営業の中でも特に無形商材を扱う経験を多く積んだ人材であれば、より活躍が期待できると言われています。
経営者感覚
経営感覚を持っていることも歓迎される要件の一つです。前項でも少し触れた通り、役員など経営層と折衝をする機会が多いためです。会社の経営計画に関わる人事関連業務を担うので、当然と言えるでしょう。
経営者感覚とは、具体的には、企業の経営戦略を十分に理解すると同時に、コストに対する意識を厳しく持つ、リソースをいかに活用するかをシビアに考えるといったようなことです。また視野狭窄に陥ることなく、経営全般を俯瞰した人事戦略を構築できることも重要なスキルとなります。
労務関係の専門知識
広く長期的な視野で戦略を提案するためには、幅広い専門知識が欠かせません。例えば、人事や労務、安全衛生の知識は、福利厚生など待遇の策定のためには必須です。加えて総務や経理に関しても知っていなければ、業務効率化に有効な提案をすることができないでしょう。
もちろん、HR業界と一口に言っても、担当分野によって業務はさまざまですから、すべての分野に詳しくなくてはいけない、というわけではありません。ただし、いずれの業界でも言えることではありますが、より多くの知識や選択肢を提示できることによって、活躍の幅も広がることは揺るぎない事実です。
まとめ
HR業界は、まだまだ発展していく可能性を秘めています。しかし、まだまだ業界に関する正確な情報が周知されていないのも事実です。そこで注目を集めているのがインタツアー。学生が企業にインタビューをし、そのレポートをSNSでシェアしていくものです。インタビューも発信も学生目線であることから、同世代に信頼され受け入れられやすいというメリットがあります。そのため、企業が求める人材が得やすいのです。採用が上手くいっていない、応募人数は集まってもイメージ通りの人材が採用できていない、という場合にはインタツアーが解決の糸口となるかもしれません。すでに2400社が導入しているオンライン採用集客システムにご興味がある方は下記からご確認ください。
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