内定とは?辞退や取り消しとは?内々定との違いや入社までの流れ
採用の過程で必ず訪れる通ることになる、「内定」の段階。企業によっては口約束だけで簡単に済ませてしまうことがある工程です。しかしその場合、内定辞退だけでなく、訴訟にまで発展するリスクも。トラブルを遠ざけるために大切なのは、一般的な流れや注意点、関連するルールなどを知っておくことです。あわせて、その背景にある法令などもご紹介していきます。
目次[非表示]
- 1.内定とは
- 1.1.内々定・仮内定との違い
- 2.内定辞退とは?
- 2.1.内定辞退率
- 3.内定取り消しとは
- 4.内定から入社までの流れ
- 4.1.内定通知書を送付する
- 4.2.内定承諾書を受け取る
- 4.3.雇用契約を結ぶ
- 4.4.入社日を決める
- 5.内定に関するよくある疑問
- 6.まとめ
内定とは
どの瞬間をもって、正式な内定と認められるのでしょうか。それは、企業が採用したい人材を決定した瞬間ではありません。一言で言えば「契約が成立した瞬間」です。企業は選考を通して採用したいと判断した応募者に対し、内定通知をします。それに対し、応募者は承諾書などによる合意の意思を表明します。この合意によって、内定が成立するとみなされます。
労働契約が成立していますので、企業が一方的に「採用したい」と考えていた時点とは違い、法的な拘束力が発生します。内定というと、正式労働契約ではないため簡単に変更可能なものと思われがちですが、実際には契約であり取り消しも簡単ではありませんので、トラブルを避けるためにも、その点を正しく認識しておくことが大切です。
内々定・仮内定との違い
似た言葉の「内々定」「仮内定」との違いは、正式な契約か口約束のみかという点です。例えば大学の新卒学生を採用する場合。日本経団連の採用選考に関する指針で「正式な内定日は、卒業・修了年度の10月1日以降とする」となっています。しかし、大学3年の秋には説明会などの採用活動がスタートしています。
どの企業も優秀な学生に対しては早めに入社の約束を取り付けておきたいもの。そのため「10月1日になれば内定を出すつもりだ」という意向を知らせることが内々定です。契約可能になる以前の期間に行う口約束ですので、こちらは法的拘束力が発生しません。この時点では学生側も選考途中の企業が複数ある状態であることが多く、企業側にとってはまだまだ辞退のリスクがある段階と言えます。
内定辞退とは?
特に新卒採用の場合には、内定後に入社を断られることが多々あります。学生であれば、まだ志向性が絞りきれない状態で就職活動をスタートし、複数企業の選考に応募している応募者も多いもの。そのため、より志望度の高い企業から内定が出た、家族から反対された、企業の対応に違和感をもった、などさまざまな理由で辞退される覚悟が必要です。また中途採用であれば、新卒採用ほど数が多くはありませんが、いわゆる「嫁ブロック」などにより、内定まで至った応募者の方から入社を辞退される可能性は残ります。
そのため、少し気が早いと思われるかもしれませんが、内定以前にお互いの条件や家族の意向などをしっかり調整しておくと、内定後の辞退を減らせるでしょう。
内定辞退率
株式会社リクルートキャリアの研究機関、就職みらい研究所が行った「就職プロセス調査」では、新卒学生の内定辞退率の高さが明らかになりました。調査対象は2020年3月卒業の学生1,118人。2019年10月1日時点での就職内定率は93.8%、内定辞退率は65.6%です。
背景にあるのは、続く売り手市場。人材不足の影響で求人数が多いことを受け、内定が出てからもより良い企業を求めて就職活動を続ける学生が多くなっています。同調査からは、大学生が就職先を決定する際の決め手としているのは「自らの成長が期待できる」ことや、「福利厚生(住宅手当など)や手当が充実している」こともわかります。企業も優秀人材獲得の努力をしていることを考えれば、内定者を引き止める努力がより重要度を増していくことは間違いないでしょう。
内定取り消しとは
選考を経て魅力的と感じる人材に内定を出したものの、企業側から採用の取りやめを申し出る場合があります。特に昨年からは、新型とコロナウイルスによる感染症の拡大で業績が悪化し、内定を取り消される学生が増えているとの報道もありました。
応募者側からすると、1つの企業から内定が出たために他社の選考を辞退したり、新たな選考を受けることをストップしたりしている場合、内定取り消しによってイチから就職活動をしなくてはならなくなるため、大きな打撃となります。とはいえ企業にも都合があるのですから、何があっても取り消しできないというわけではありません。内定後の取り消しが認められる場合、認められない場合、その理由などが明確に規定されています。
特別な理由がない限り内定通知後の取り消しは違法
冒頭でお伝えした通り、内定は契約です。そのため、まだ入社前だからといって簡単に取り消しをすることはできません。内定の取り消しは解雇と同様。解雇のルールは労働契約法16条で「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定められています。また、やむを得ない事情で新卒者の内定を取り消す場合には、学校とハローワークに通知する義務があります。
「希望する人物像と違った」「やる気が感じられない」という程度で採用を見送ることは、内々定の段階までしか許されませんが、反対に合理的な理由と認められる場合ももちろんあります。過去の労働判例をもとに確立された、整理解雇の4要件についても、以下で詳しく説明していきます。
内定取り消しが認められるケース
すでに触れたように、企業側から一方的に内定を取り消すと違法となります。しかし、整理解雇の4要件に当てはまる以下のケースであれば問題とはなりません。
【内定者都合】
・大学卒業ができなかった場合
大学在学中には就職できないという法律はありませんが、卒業を条件に内定を出している企業も多くあります。
・内定者が病気やケガを患い、就業できなくなった場合
配置転換などで対応できる程度であれが正当とは言えませんが、完全に就業が不能であれば妥当です。
・内定者が逮捕された場合
傷害事件や詐欺事件といった刑事事件を起こして逮捕された場合、反社会的な行いに対して内定取り消しが可能です。
・重大な経歴詐称が見つかった場合
企業が「その事実を知っていれば採用しなかった」という場合は重大な経歴詐称と認められ、不採用とすることができます。
【企業都合】
・整理解雇の4要件を満たし、経営不振として認められた場合
①人員整理の必要性
経営悪化から脱却するための方策として、従業員の解雇が妥当であること
②解雇回避努力の履行
解雇という決断に至るまでに、その選択肢の回避に向けて最大限努力をしたこと
③被解雇者選定の合理性
選定者主観ではなく、客観的に合理性をもって解雇者を選定すること
④解雇手続きの妥当性
理由や詳細な内容を十分に説明し、納得が得られるまで協議・交渉をすること
求職者は内定承諾後でも内定辞退ができる
企業側からの内定取り消しには厳しいルールがありますが、実は求職者から辞退することは難しくありません。民法627条で定められている通り、期間の定められた雇用契約でなければ、いつでも解約を申し入れることができるからです。また、解約を申し入れてから2週間が経過することで契約が終了すると決まっています。
理由を伝えなければならないというような決まりもないため、内定の段階で「他社に合格した」「人事部の対応が好ましくない」などの理由で、かつ理由を伝えずに辞退することも可能で、入社直前であっても特に違法性はありません。ただ、あまりにも常識や誠意に欠ける辞退の仕方であった場合など、過去に企業からの損害賠償請求に至ったケースもあります。
内定から入社までの流れ
内定後、入社までにはどのような手続きが必要になるでしょうか。以下のように順を追って詳細にご説明していきます。
①内定通知書を送付する
②内定承諾書を受け取る
③雇用契約を結ぶ
④入社日を決める
内定通知書を送付する
すでに何度か繰り返していますが、内定は契約です。書面を取り交わす場合に必要になるのは「内定通知書」と「内定承諾書」。応募者に電話やメールなど合格の連絡をしたうえで、書類を送付するという流れです。以下のような内容を記載します。
・採用が決定した旨
・入社日
・入社までに準備が必要なもの
・内定取り消し事由
・内定承諾書の送付期限 など
この工程に関しては、電話やメールで済ませてしまう企業もあります。法的には、内定通知書を送ることは義務ではないからです。しかし、書面のやり取りをするメリットもあります。内定通知書や内定承諾書とあわせて労働条件通知書を送ることで、求職者の不安を軽減できるのです。もし不明点があっても問い合わせにくい段階ですし、企業との認識のギャップを解消でき、入社意欲も高められるでしょう。
内定承諾書を受け取る
内定承諾書は、求職者の側から企業に提出するものです。この書面へのサインをもって、契約が成立することとなります。ただ、内定通知書と同様、法的な決まりや共通の書式があるわけではありません。人材業界やHR業界の会社がインターネット上で公開しているテンプレートもありますが、個々人がそれを参考にしてイチから作成するのはハードルが高いもの。企業側からしても、記載事項に漏れがあった際には対応が必要になるなど、管理の手間がかかります。そのため、企業側で大枠を作成しておくとスムーズです。「令和 年 月 日」というように日付・氏名欄などは空白にして作成し、必要事項を自筆での記載するように依頼しましょう。以下が、基本的に記載する内容です。
・内定を承諾した日付
・氏名
・署名・捺印欄 など
雇用契約を結ぶ
内定承諾書を受理したら、次は雇用契約を結びます。ここまでは口頭で済ませる場合もあるとご説明しましたが、雇用契約に際しては、労働条件通知書や就業規則などで労働条件を明示することが必須です。記載内容も法で定められており、労働契約時間や就業の場所、労働時間、休日休暇、賃金など、絶対的明示事項は、その名の通り必ず記載をする義務があります。また、ここに記された内容が実際の勤務内容と異なっていた場合には労働者はその時点で契約破棄が可能になるというほど、重要な書類となります。
労働条件通知書に関しては厚生労働省がひな形を公開していて、近年では物理的な紙に限らず出力して書面を作成できるのであればSNSなどでの明示も可、となりました。この書面を提示した後、呼応契約書に署名・捺印をすることで正式な雇用契約となります。
入社日を決める
新卒一括採用の場合、ほとんどの企業で入社日は年度初めの4月1日となります。しかし中途採用では、そうはいきません。すぐに働きたいと申し出られる場合もあるでしょうし、まだ前職の勤務が残っているので数ヶ月後にしてほしいと言われる場合もあるでしょう。そのため、各個人の都合にあわせた勤務開始日程を決める必要があります。多くの中途入社者を受け入れている企業などでは、毎月1日と15日を入社日とする、というように入社スケジュールを決めている場合もあります。
そのような場合でも、どの入社日を選ぶかは各自の都合がかかわってきますので、お互いの希望のすり合わせが必要です。このようなことは早めに決めておくと準備がスムーズですので、先述した、雇用契約を結ぶタイミングで決めておくことをお勧めします。
内定に関するよくある疑問
最後に、内定にまつわる3つの質問をご紹介し、次項でお答えしていきます。
・内定通知は口頭やメールでも有効?
・内々定・内定を出す適切なタイミングはいつ?
・内定通知後、入社意志の返事期間はどれくらいが適切?
内定通知は口頭やメールでも有効?
内定の際には書面を用意するとお伝えしましたが、実は諾成契約(だくせいけいやく)といって、当事者と同士の合意があれば成立する契約とされています。そのため口頭での内定通知・内定承諾でも契約は有効です。
書面を用意する手間などを考えて、この手続を省くことは可能ですが、その際には気をつけなければならないことがあります。それは承諾した内容の証拠が残っていないことです。たとえば入社の日程や、採用の条件など、口頭でだけ伝えていると認識にズレが生じる危険性があります。法的に必須ではありませんが、後々の争いの種とならないよう、書面として形に残しておくと確実です。
内々定・内定を出す適切なタイミングはいつ?
優秀な人材には早期に内定を出して確保しておきたいというのが企業の本音でしょう。中途採用であればお互いの都合で決めればよいのですが、新卒採用の場合にはルールがあります。就活の早期化により学業への阻害がないように経団連(日本経済団体連合会)が定めている「採用選考に関する指針」です。選考活動がスタート可能になるのは、卒業・終了年度の6月1日以降。つまり、内々定が出せるのはこの日から。同様に正式な内定日は卒業・終了年度の10月1日以降に出せることになっています。
ただ近年ではこのルールが形骸化し、早期に内定を出している企業があるのも事実です。同時にコロナ禍で学生の就職活動にも変化が見られます。より多くの内定を求め、応募する企業数が増えているのです。その影響で、内定辞退も増えるという結果に。そのような現状を鑑みて、内定辞退が増えることを見込んだ採用計画を行う必要があります。
内定通知後、入社意志の返事期間はどれくらいが適切?
一般的には5日~1週間が目安です。求職者の心理として、複数企業の選考を受けた中から最良の選択をしたいと思うのは当然のこと。そのため、返事の期限ギリギリまで待って、できるだけ手持ちの内定を多くした状態で決めたいと考える人も多いでしょう。その気持を配慮して長く期間を設ければ喜ばれるかもしれません。
しかし求職者の心情に配慮するあまり、1ヵ月以内と長い期間を設けて、締め切り直前まで待ったうえで辞退された場合などは、企業側の負担が非常に大きくなります。だからといって極端に短く設定して「すぐに承諾書を提出しないなら取り消す」などという姿勢でいては、オワハラ(就活終われハラスメント)と言われてしまいかねませんので注意が必要です。求職者の都合も考えつつ、自社の選考コストがかかり過ぎないようにする。そのバランスをとれるスケジュールが、5日~1週間なのだと言えるでしょう。
まとめ
一口に内定と言っても、さまざまなレイヤーがあり、法律もかかわってくる大切な契約であることがおわかりいただけたでしょうか。複雑なルールのある中で、各社がより強く自社のメリットを打ち出すことで、優秀な人材を確保する努力をしています。そこで企業が苦労するのは「企業が推したい点と、求職者が魅力に感じる点は必ずしも一致しない」という点です。その溝を埋め、内定辞退を防ぐのが、インタツアーのメリットの一つ。学生が企業にインタビューをしてPRを担う仕組みですので、若手求職者目線の企業イメージを伝えることができます。「自分に合う会社か」を早期に判断してもらえて、入社直前での内定辞退というリスクを回避するためにも、インタツアーの有効活用がお勧めです。