終身雇用とは|メリット・デメリットと今後の展望と企業がすべき対策を解説!
人件費の高騰や労働力不足が問題視されている現在、終身雇用制度が崩壊するといわれています。果たして、終身雇用制度へのニーズは今後どのような動きを見せているのでしょうか。今回は、終身雇用制度に関する基礎知識から、メリット・デメリット、終身雇用制度の将来性について解説します。この記事を読むことで、企業が取るべきアクションが理解できるようになるので、ぜひ参考にしてみてください。
目次[非表示]
- 1.終身雇用制度とは?
- 1.1.成果主義とのちがい
- 1.2.終身雇用制度は法的義務?
- 2.終身雇用のメリット
- 2.1.終身雇用の従業員側のメリット
- 2.2.終身雇用の企業側のメリット
- 2.2.1.長期的な人材育成
- 2.2.2.長期的な人材確保
- 2.2.3.長期的な人材を採用するには?
- 3.終身雇用のデメリット
- 3.1.終身雇用の従業員のデメリット
- 3.1.1.努力を怠りやすい
- 3.1.2.若いうちは評価されにくい
- 3.2.終身雇用の企業側のデメリット
- 4.終身雇用は今後崩壊する?
- 5.今後会社側がすべき対策とは
- 5.1.働き方を多様化させる
- 5.2.人事評価の制度を改善する
- 6.まとめ
終身雇用制度とは?
終身雇用制度とは、倒産などの事態にならない限り、一つの企業で定年になるまで勤め続ける制度です。勤続年数などによって昇進が決まる年功序列型や、退職金制度、新卒一括採用と同様に、終身雇用制度は日本の正社員雇用における慣行とされています。
1900年代から1910年代に、短期転職によるコストが問題視され、定期昇給制度や退職金制度などの雇用制度が取り入れられました。
長期的な雇用に関する動きは第二次世界大戦の影響で一時衰退するも、終戦後に大企業が中心となって終身雇用制度を導入し、安定した事業の運営を実現するための仕組みとして一般化しました。
成果主義とのちがい
成果主義とは、能力が高く成果を出した社員を評価する考え方です。成果主義は、実績主義や結果主義と呼ばれることもあります。
終身雇用制度においては年功序列型による評価が一般的です。そのため、入社年次や年齢、学歴などが終身雇用制度の評価基準になるのに対して、成果主義は若手社員であっても実力があれば正当に評価されます。
裏を返すと、勤続年数の長いベテラン社員であっても実力がなければ評価されません。
終身雇用制度は法的義務?
結論から述べると、終身雇用制度には法的な義務がありません。つまり、終身雇用制度を導入しないことにより、罰則を受けることはないということです。あくまで、企業と従業員間の労働契約上の制度となります。
終身雇用制度を取り入れるかは会社が決定できるため、運営方針に合わせて成果主義を実施している企業も見受けられます。
終身雇用制度には法的な義務はないですが、正当な理由がないのに従業員を解雇することは法律に触れる可能性があるので注意してください。
終身雇用のメリット
終身雇用のメリットには何が挙げられるでしょうか。ここでは、終身雇用のメリットを会社側の立場と従業員側の立場から解説します。
終身雇用の従業員側のメリット
終身雇用における従業員側のメリットは以下の通りです。
【従業員側のメリット】
• 安定した収入と雇用
終身雇用制度は退職までの雇用が保障されるので、倒産などの事態に陥らない限り、安定した収入と雇用が得られます。また、年功序列型は年齢や勤続年数によって評価されるので、働き続ければ給与も上がっていく点がメリットに挙げられるでしょう。
さらに、基本的には退職までの雇用が保障されているので、転職の心配をする必要がありません。転職活動には労力がかかるため、雇用が安定している点をメリットに感じる人が多いです。
終身雇用の企業側のメリット
終身雇用における企業側のメリットは以下の通りです。
【企業側のメリット】
• 長期的な人材育成
• 長期的な人材確保
次の章で、それぞれのメリットについて詳しく確認しましょう。
長期的な人材育成
終身雇用制度を導入すると、長期的な人材育成が可能になります。従業員が定年まで在籍することを前提としている制度であり、時間をかけて従業員を教育できるためです。
終身雇用でない場合、コストをかけて育成した従業員が転職する可能性があり、長期的な人材育成が保障されません。
さらに、人材育成を長期的にできると、個人の業績などのデータを蓄積できるので、課題改善のための計画が立てやすく、企業の成長に繋げやすくなります。
長期的な人材確保
終身雇用制度は、長期的な人材を確保することができます。同じ会社で働き続けることで、従業員の帰属意識が強くなり、離職率が下がるためです。
終身雇用制度を取り入れていない企業の場合、従業員が短期で転職する可能性があるため、採用コストがかかります。また、採用活動も常時行う必要があり、退職した従業員のポジションを補えるように工夫する必要があるのです。
一方で、終身雇用制度は従業員が転職する可能性が少なくなるので、採用活動の簡略化や採用コストの軽減が期待できます。
長期的な人材を採用するには?
一番重要なのは入社後のミスマッチを起こさないことです。
そのために、上司やまわりの社員との相性、必要とされるスキル、向き合っていく企業の課題を採用前に理解してもらうことはもちろん、人材育成・成長に関する長期的な展望を予め知ってもらうことも重要です。
説明会や面接など採用の場で情報を発信する機会はあるものの、企業からの一方的な発信になってしまうため、伝えられる情報は限られてしまいます。
それを解決する施策として、かしこまった採用の場とは別に、候補者とカジュアルに会話できる場を設けることが挙げられます。候補者が欲している情報は何なのか生の声を聞き、双方コミュニケーションが取れるようになることで、候補者側は長く働きたいという確固たる意思を持って面接・入社に臨めるでしょう。
終身雇用のデメリット
終身雇用のメリットについて紹介しましたが、デメリットには何が挙げられるでしょうか。ここでは、終身雇用のデメリットを会社側の立場と従業員側の立場から解説します。
終身雇用の従業員のデメリット
終身雇用における従業員側のデメリットは以下の通りです。
【従業員側のデメリット】
• 努力を怠りやすい
• 若いうちは評価されにくい
次の章で、それぞれのデメリットについて詳しく確認しましょう。
努力を怠りやすい
終身雇用のデメリットとして、従業員が努力を怠りやすい点が挙げられるでしょう。終身雇用制度は従業員が努力して実力をつけなくても、勤続年数に基づいて評価される制度であるためです。
実際に、成果を上げてないのに高い給与を貰っている従業員を見かけた経験がある人も多いのではないでしょうか。
従業員の質の低下を防ぐためには、資格やスキル取得を支援する制度を整えて、スキル向上を推奨する仕組みを作ることが大切です。
若いうちは評価されにくい
終身雇用制度は、若手社員が評価されにくい点がデメリットです。いくら成果を上げていても勤続年数が足りていない場合、正当な評価を受けられない可能性があります。
納得のいく評価を受けられないと、従業員のモチベーションが低下し、業務の生産性が落ちる可能性があるため、注意が必要です。
若手社員のモチベーションを保つためにも、実力や成果によって評価する基準も取り入れるようにしましょう。また、不満を感じている従業員へのヒアリングを実施し、企業と従業員の相互が納得いく落とし所を見つけることが重要です。
終身雇用の企業側のデメリット
終身雇用における企業側のデメリットは以下の通りです。
【企業側のデメリット】
• 人件費が高騰する
終身雇用を導入することで長期的な人材育成が可能になるものの、人件費が高騰する点がデメリットとして考えられるでしょう。
年齢に応じて給与を上げていく必要があるので、会社に大きく貢献していない社員であってもコストがかかるためです。現在は、終身雇用における人件費を問題視する企業が増加しています。
そのため、終身雇用は今後崩壊することが危惧されているのが現状です。次の見出しで、終身雇用の今後について確認しましょう。
終身雇用は今後崩壊する?
「終身雇用は将来どうなるの?」「終身雇用が崩壊するといわれているのはなぜ?」と疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
結論から述べると、終身雇用制度を廃止する企業の割合は増加することが予想されます。そもそも終身雇用は日本経済、会社の成長が前提の制度ですが、日本の経済は低迷気味にあるのが現状です。
また、中高年労働者が増加するのに伴って、コストの高騰が懸念されています。さらに、少子化によって若い労働力が不足傾向にあり、若手社員を確保するために成果主義を取り入れる企業が増えているのです。
実際に、厚生労働省の資料によると、2016年時点で同一企業に勤め続けている人口の推移は低下傾向にあります。
参考:厚生労働省「我が国の構造問題・雇用慣行等について」
今後会社側がすべき対策とは
終身雇用制度が近いうちに完全になくなる可能性は少ないですが、雇用制度や働き方は変化し続けることが予想されます。ここでは、今後会社側がすべき対策を確認しましょう。
【会社側がすべき対策】
• 働き方を多様化させる
• 人事評価の制度を改善する
それぞれの対策について、以下で紹介します。
働き方を多様化させる
従業員が自分に合った働き方を選択できる環境を整備しましょう。働き方を多様化させることで、従業員の離職を防ぐことができ、働きやすい職場を目指せます。
例えば、働き方を多様化させる方法としてフレックス制度やテレワーク、時短勤務などが挙げられるでしょう。育児や介護などの理由で離職を余儀なくされる従業員は、家庭の都合に合わせた働き方ができるようになれば、離職する必要がなくなります。
また、福利厚生にも魅力的な独自性があると人材確保に繋がるため、従業員が働きやすい環境を目指すことが大切です。
人事評価の制度を改善する
人材を確保するには、人事評価の制度を見直しましょう。従業員が正当に評価されていないと感じると、会社に対する不満が募り、離職する人の割合が増える可能性があります。
例えば、キャリアアップできる仕組みを作る、年功序列ではなく実力で評価される仕組みを作るなど、改善を目指しましょう。
また、評価に対して不満を抱えている従業員に対して、ヒアリングなどの場を設けて、ケアを行うことが重要です。
まとめ
今回の記事では、会社の将来的な運営方針を考えたいという企業に向けて、終身雇用のメリットやデメリット、今後の需要について解説しました。終身雇用制度は、特定の企業で定年になるまで勤め続ける日本の慣行です。企業にとっても従業員にとっても雇用が安定しやすい点がメリットですが、終身雇用による人件費や従業員のモチベーションなどが懸念されています。今後は、終身雇用制度を廃止する企業が増えることが予想されるため、働き方を多様化させるなどして対策を行うことが大切です。