ポテンシャル採用とは?メリットやデメリット、成功させるためのポイントを解説
少子化が進み、企業が若手人材を求める競争は激化しています。その中で注目されているのが、中途採用でありながら若手をメインターゲットとするポテンシャル採用です。本稿では、特徴やメリット・デメリット、活用している企業の事例を通して、どのような企業がポテンシャル採用の導入に向いているのか見ていきます。ぜひ自社にあてはめて、検討材料としてみてください。
目次[非表示]
- 1.ポテンシャル採用とは?意味や目的
- 2.ポテンシャル採用のメリット
- 2.1.業界未経験でも能力のある人材を獲得できる
- 2.2.イノベーションが期待できる
- 2.3.企業の若返りにつながる
- 2.4.初期教育コストを抑えることができる
- 3.ポテンシャル採用のデメリット
- 3.1.人材開発コストがかかる
- 3.2.離職の恐れもある
- 4.ポテンシャル採用で失敗しないためのポイント
- 4.1.育成を前提として研修制度を整える
- 4.2.社会人の基礎が整っているかどうかみる
- 4.3.採用後のキャリアビジョンをすり合わせる
- 5.ポテンシャル採用を実施している主な企業一覧
- 6.大手企業のポテンシャル採用の取り組み一例
- 6.1.ヤフー(Yahoo!JAPAN)
- 6.2.サイボウズ
- 7.ポテンシャル採用のよくある疑問
- 8.まとめ
ポテンシャル採用とは?意味や目的
ポテンシャル採用とは、ポテンシャル、つまり潜在能力を期待して採用すること。経験やスキルを積んだ即戦力ではなく、将来の成長が期待できる若手を獲得する、採用手法の一つです。経験ではなく将来性を見るという点で、新卒採用もポテンシャル採用の一種であるという考え方もできます。
では、業界経験という価値を判断基準から除外することに、どのようなメリットがあるのでしょうか。何より大きいのは、本人の能力だけに集中して人材を見られること。他にも「ポテンシャル採用の中心ターゲットとなる第二新卒なら、社会人としての基礎ができているため育成コストが抑えられる」「他業種での経験もあるため、自社に新しい考え方を取り入れられる」といったような点が挙げられます。ですから、将来を考えて強い組織づくりのための種まきをするのが、ポテンシャル採用なのだと言えます。
転職組・中途採用でもポテンシャル採用が有望視されている
前項で述べた通り、ポテンシャル採用の中心は、第二新卒もしくは新卒といった若手です。年齢でいえば20代前半。ところが近年では、20代後半も含めた30歳未満にまで対象を広げる企業も増えてきています。その背景にあるのは、厳しさを増す人材不足。少子化の影響もあり、優秀な若手を採用する難易度は上がっています。
そこで、区切りを30歳までスライドさせることで対象を広げ、より多くの選択肢の中から有望な人材を採用しようと考えているのです。長期的な企業の成長を考えれば、より多くの優秀な社員が必要になるのは明白なこと。そのため、新卒・第二新卒だけでなく、他業界である程度の年数にわたって経験を積んだ転職者のポテンシャル採用も、これからさらに重要度が増していくでしょう。
ポテンシャル採用のメリット
まずは、ポテンシャル採用のメリットをご紹介していきます。主なものは以下の4つ。次項で詳しく見ていきます。
・業界未経験でも能力のある人材を獲得できる
・イノベーションが期待できる
・企業の若返りにつながる
・初期教育コストを抑えることができる
業界未経験でも能力のある人材を獲得できる
純粋に本人の能力・将来性だけを見て評価を出せるのが、ポテンシャル採用のメリットです。従来の中途採用では、自社が求めるスキル・実績を中心に人材を評価していましたので、判断軸がまったく変わってきます。一人の人間の過去を見るか、未来を見るかだと言えば、違いの大きさがわかるでしょう。
経験を問わない分、ヒューマンスキルに重点を置けます。具体的には「コミュニケーション能力が高いか」「業務に対する学習意欲が高いか」「積極的に業務改善案が出せるか」などといった点。どのような人物を求めているのか見極めておくことで、「自社が欲する人材像かどうか」だけに注目して優秀な人材を獲得できるのは、大きなメリットだと言えます。
イノベーションが期待できる
社会人経験がある第二新卒を採用する場合、新卒との差は「他業種での勤務経験があること」です。転職したからといって、その経験や考え方を捨てさせるのではなく、自社に取り込むことでイノベーションが期待できます。
どこの業界でも、業界ごとの慣習や暗黙のルールというのは根強いもの。共通認識があるからこそ仕事がスムーズになるという一面もありますが、凝り固まった考え方や非効率な業務の改善を邪魔してしまっているのも事実です。ですから、他社から来た若手社員から得た情報を軽く見ることなく、オープンマインドで新しい考え方を取り入れる。それによって、自社の変革を後押しできる土壌が育まれていくとも言えます。
企業の若返りにつながる
若返りを期待したい企業にも、ポテンシャル採用はピッタリです。市場の中心が20代の若手であるため、積極的に取り入れることで、社内における若手社員の割合が高くなります。周知の通り、少子化で新卒学生のボリュームは減少傾向。知名度の高くない企業こそ、若手の採用は難しくなっています。そんな状況の中で、新卒以外の若手を獲得する方法を持てるということも大きな利点です。
フレッシュな風を入れると、新しい考え方を取り入れたり、価値観をアップデートしたりすることにもつながるもの。また、オフィスの雰囲気も明るく勢いのあるものになりやすいものです。常に社内の体制を更新しながら、勢いのある会社であることを求めるのであれば、ポテンシャル採用は有力な選択肢になるでしょう。
初期教育コストを抑えることができる
新卒の社員にまず教育することは、仕事ではありません。名刺の渡し方、電話の受け方、メールの書き方などではないでしょうか。社会人としての基本的なマナーは、当然ながら学校で学ぶことができないものですが、社会人として活躍していくためには必須です。とはいえ、直接的に売上につながるようなコストではありませんから、企業としては抑えられたほうがありがたいもの。
その点、一度就業している転職者ならば、新卒で入社した企業で最低限の社会人マナーは身に付けているはずです。そのため中途採用の一つであるポテンシャル採用であれば、新卒を採用してイチから育成するよりも教育コストを抑えられるというメリットがあります。
ポテンシャル採用のデメリット
ここまでポテンシャル採用のメリットを見てきましたが、残念ながらデメリットもあります。以下の2点について、次項で詳しく説明していきます。
・人材開発コストがかかる
・離職の恐れもある
人材開発コストがかかる
前述のメリットと矛盾するようではありますが、育成にコストがかかるという事実は見落とせません。もちろん新卒ほどではありませんが、即戦力となる経験者を採用する場合と比べると、業界知識を身につけるまでには時間と費用がかかってしまいます。業界経験がないので、当然といえば当然です。
経験のみを見て(いわばポテンシャルを無視して)即戦力となる人材を採用するのか、育成にコストがかかることを覚悟のうえで、経験はなくとも将来性のある若手を採用するのか。自社の状況と照らし合わせて、どの採用方法を選択するか検討する必要があるでしょう。
離職の恐れもある
育成コストと関連する部分ではありますが、離職の痛手が大きいのもポテンシャル採用のデメリットです。経験者を採用する場合にも採用コストはかかっていますが、ポテンシャル採用であれば、それに加えて育成コストもかかっているからです。コストをかけて育成した時点で退職し、投資が回収できないという痛手も覚悟しておかなければなりません。
せっかく転職したのに退職してしまう理由の一つとしては、「転職してみたらイメージと違った」というものが考えられます。そのため、育成を進めると同時に、将来への目線を合わせておく、自社への信頼感や満足感を高めておくなど、社員の長期定着を図る努力が欠かせません。
ポテンシャル採用で失敗しないためのポイント
採用を成功させるためには、どのようなポイントがあるでしょうか。採用前に見極めるべきポイントと、受け入れ側に必要な姿勢をご紹介していきます。
・育成を前提として研修制度を整える
・社会人の基礎が整っているかどうかみる
・採用後のキャリアビジョンをすり合わせる
育成を前提として研修制度を整える
デメリットの項目で述べた通り、即戦力採用と比較すると育成コストがかかるポテンシャル採用。業界経験の少ない社員に向けて、どのような研修が必要なのかを考えて、制度を整備しなければなりません。その際には、どのような業界からの転職者かにもよりますが、身についているのは最低限の社会人マナーのみであると仮定しておくと間違いがないでしょう。
すると教育内容は、自社の属する業界の規模、その中での自社のポジション、取引企業について、その業界に関する周辺知識など、多岐にわたります。幅広く教育できる研修・教育制度を整えておく必要があるということです。自社で教育体制を整えられるのか、研修を専門に扱う業者に外注するのか、その場合はどの業者に発注するのかなど、検討が必要になります。
社会人の基礎が整っているかどうかみる
採用前に必ず見ておきたいポイントは、「社会人としての基本的なマナーや、基礎的な力が備わっているかどうか」です。業界知識がないことを前提とした採用ではありますが、社会人としての基礎もできていないとなると、新卒採用と同じ。想定以上に教育コストがかかってしまい、第二新卒をターゲットにしたポテンシャル採用をする意義が薄くなってしまいます。
そのため、面接の際に言葉遣いや転職理由などを詳細に確認しておきましょう。このステップを疎かにすると、社会人の基礎から教えなければならず、活躍が見込めるまでに時間も費用もかかってしまったという事態にもなりかねません。そのような事態を避けるためにも、慎重を期する必要があるポイントです。
採用後のキャリアビジョンをすり合わせる
いくらポテンシャルがあっても、自社の求める方向性と人材の志向性に乖離があっては活躍が期待できません。そのため、5年後や10年後にどうなっていたいのか、どういう働き方をしたいと考えているのかを話し合っておくことが大切です。そこを怠ってしまうと、入社後にお互い「何か違う」ということになり、早期退職やモチベーションの減退といったリスクにもつながります。
お互いが不幸になることを避けるためにも、大まかなビジョンだけでなく詳細なすり合わせが必要です。「仕事のゴールをどこに置いているのか」「どのようなポジションを目指しているか」「具体的にどのような仕事をしたいのか」など。面接での質問内容をじっくり検討しておくことが、正確な意思を把握する助けとなります。
ポテンシャル採用を実施している主な企業一覧
大手企業は新卒一括採用を中心としているイメージが強いかもしれません。しかし以下のような著名な企業も通年でポテンシャル採用を実施しています。
・ファーストリテイリング
・楽天
・ソフトバンク
・ディー・エヌ・エー
・ネスレ日本
・コロプラ
・メルカリ など
大手企業のポテンシャル採用の取り組み一例
特徴的なポテンシャル採用を取り入れているのが、以下の2社です。次項で具体的な内容をご紹介していきます。
・ヤフー(Yahoo!JAPAN)
・サイボウズ
ヤフー(Yahoo!JAPAN)
就職活動の多様化にともない、より柔軟な採用に踏み出したヤフー株式会社。2016年には新卒の一括採用を廃止しました。代わりにポテンシャル採用を導入することで、第二新卒や既卒人材の選考機会を平等にし、優秀な人材を採用する目的があるといいます。例えば、日本とは卒業時期が異なる海外の大学に留学している学生や、博士号取得など。画一的な4月入社だけではスムーズに入社しづらい学生にも、広くチャンスが与えられるように。
ポテンシャル採用の方針としては、全職種が対象で30歳以下であれば通年で採用。一般的な説明会・選考の時期を考慮に入れる必要はないとのこと。社会人経験がない場合、入社時期は従来の4月と10月で、海外留学から帰国した学生も入社しやすいタイミングとなっています。
サイボウズ
2015年に開始したU-29(ユニーク)採用。この年齢制限を排したのが、ポテンシャル採用です。ヤフーとは対照的に、新卒採用・キャリア採用の枠組みも残しています。そのため、対象となるのは「希望職種の要件を満たさない」「新しい職種に挑戦したい」といった特徴のある人材。新卒・キャリア採用のどちらにも応募が難しかった人材を採用します。大学卒業後に4年間、海外青年協力隊に参加した後にポテンシャル採用で入社した社員もいるのだとか。
営業やデベロップマーケティング、テクニカルマーケティングなど、9つの職種に配属される可能性のある募集です。社会人経験がある場合には前職の年収を参考にするといった、中途採用の要素も取り入れた仕組みとなっています。入社のタイミングは、応募者との相談で随時可能。
ポテンシャル採用のよくある疑問
初めてポテンシャル採用を導入する場合、どのようなルールを設けていくかが難しいところです。そこで最後に、よくある以下の疑問について解説していきます。
・ポテンシャル採用は何歳までが一般的?
・エンジニアや法務など専門スキルの高い業務でも可能?
ポテンシャル採用は何歳までが一般的?
明確な定義はありません。そのため、前項のサイボウズ株式会社年齢制限を設けていない企業もありますが、一般的には30歳までという企業が多いのが実情です。というのも、経験ではなく伸び代に期待して人材を採用という手法だからこそ。
企業に数年属したといっても、若手のうちは、キャリアの方向性がまだ定まっていないもの。そのためまだ力が発揮できていないからといって、能力も低いとは限りません。むしろ自身の特性が生かされる仕事に就き、業界知識を深め、自らのワークスタイルを身に着けていくことで、大きく成長していくことが期待できます。やはり30代以上となると、キャリアステップや給与なども総合的に考えて、即戦力としての活躍が求められるのが一般的と言えるでしょう。
エンジニアや法務など専門スキルの高い業務でも可能?
専門職にも、ポテンシャル採用は活用できるでしょうか。その答えは、一つのメリットである「初期コスト」を考えれば自ずと出てきます。エンジニア、法務といった専門的な業務を遂行するには、社会人の基本ができているだけでは歯が立ちません。実態として、教育コストがかかる職種でポテンシャル採用の求人数が少ないのは、メリットが目減りしてしまうためでしょう。
ただ、専門スキルの必要なスキルでの職種での応募は少ないとはいえ、不可能ではありません。その見極めポイントとなるのは、将来の自社のために教育にどの程度の資源を投入できるかです。第二新卒をはじめとした若手人材の活躍を促進するために、社内の教育制度を整備する体制が整えられるかどうかが、専門職でのポテンシャル採用が可能かどうかの判断基準となります。
まとめ
応募者のポテンシャルに期待して採用を進めるポテンシャル採用。注目を集めている採用方法ではありますが、成功に導くためには自社の状況を鑑みて、研修制度の整備ができるかどうかなどを検討する必要があります。また導入の際にもう一つ課題となるのが、衆知の難しさです。ポテンシャル採用を始めたことをホームページなどに記載しただけでは、優秀な若手の目に留まるのは難しいもの。
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