業界別・新卒の離職率の平均を紹介|離職率が与える影響や下げるための対策も
厚生労働省の調査※1によると、新規学卒就職者における就職後3年以内の離職率は32.8%にも及ぶことが明らかになりました。実際に、新入社員の離職率の高さを課題に感じている企業も多いのではないでしょうか?
今回の記事では、離職を取り巻く現状や課題、離職率を改善する方法を解説します。この記事を読むことで、自社の離職における課題が明らかになり、課題を解決するための方法を知ることができますので、ぜひご参照ください。
参照※1 新規学卒就職者の離職状況(平成29年3月卒業者の状況)
目次[非表示]
- 1.離職率とは
- 2.離職率の計算方法
- 3.2019年から過去10年間の離職率は平均15%
- 3.1.業界別の離職率はサービス業がトップ
- 3.2.大卒新卒3年後の離職率は30%超
- 4.離職をとりまく現状
- 5.企業の離職率が高いとどうなるのか
- 5.1.採用・育成コストが増える
- 5.2.企業のイメージがダウンする
- 5.3.採用問題が悪化する
- 6.離職率を上げないためには
- 6.1.採用時にミスマッチを無くす
- 6.2.社内の風通しをよくする
- 6.3.人事評価制度を再考する
- 6.4.働き方改革を推進する
- 7.まとめ
離職率とは
離職率とは、組織に在籍している人数に対して、一定期間後に退職した者の割合のことです。
基本的に、年度の初めから終わりまでの1年間で算出されることが多いですが、データを使用する目的によって、算出方法が変わります。例えば、新入社員が早期退職した割合を知りたい場合、入社1年目〜3年目の社員を対象にして計算されることが多いです。
離職率を算出することで、従業員の会社に対する満足度や今後の採用方針、働き方改革の必要性などを確認できるため、多くの企業にとって重要なデータとなっています。
離職率の計算方法
出典元:-2019 年(令和元年)雇用動向調査結果の概況-
厚生労働省の調査※2では、離職率は「常用労働者数に対する離職者数の割合」と定義されています。なお、計算式は以下の通りです。
離職率=「離職者数」÷「常用労働者数」×100%
上記の算出方法は、労働法などの法律で定められている訳ではありません。一般的に、離職に関する雇用状況や、離職者の属性を明らかにするために、離職率がデータとして活用されます。また、企業の採用方針を決定する際や、採用コストを計算する際に利用されることもあります。
2019年から過去10年間の離職率は平均15%
出典元:-2019 年(令和元年)雇用動向調査結果の概況-
前章で紹介した調査※2によると、2009~2019年の10年間における離職率の平均は「15%」ということが分かりました。なお、2020年の上半期離職率は「8.5%」となっています。
また、労働政策研究・研修機構が発表した調査※3では、日本の勤続年数は「11.9年」ということが明らかになっています。アメリカの勤続年数が「4.2年」であることを考えると、各国から見た日本の離職率は低いといえるでしょう。
しかし、終身雇用が崩壊した現在は、離職や転職へのハードルが低くなっており、将来的に離職率が高くなることが予想されます。
業界別の離職率はサービス業がトップ
出典元:2019年(令和元年)雇用動向調査結果の概要
上記で参照した調査※2によると、令和元年において離職率が最も高かった業種は「宿泊業・飲食サービス業」の33.6%です。続いて、「生活関連サービス業・娯楽業」の20.5%、「サービス業(他に分類されないもの)」の18.8%となっています。
日本最大級の総合転職支援サービスである「エン転職」※4の調査では、20代が退職するきっかけとして「給与」や「拘束時間」、「成長感の低下」が挙げられました。他にも、「やりがい・達成感を感じない」や「企業の将来性に不安を感じた」などの理由で、退職を考えた人が多いことが明らかになっています。
そのため、サービス業においても、給与や労働時間などの働き方や、やりがい、企業の将来性が理由で離職する人が多いといえるでしょう。
参照※4 「退職のきっかけ」実態調査
大卒新卒3年後の離職率は30%超
近年は、新人社員の離職率の高さも問題視されています。厚生労働省の調査※5によると、2017年時点では、大卒の1年目で「11.6%」、2年目で「11.4%」、3年目で「9.9%」の新入社員が離職したことが明らかになりました。
つまり、新規大卒就職者の30%以上が、就職後3年以内に離職しているということです。新規大卒就職者の離職率に関する傾向は、ここ数年で大きな変化はありません。
また、学歴別に2017年の離職率を見ていくと、新規中卒就職者が「59.8%」、新規高卒就職者が「39.5%」となっており、就職するタイミングが早い方が離職率は高くなる傾向にあります。
参照※5 新規学卒就職者の離職状況(平成29年3月卒業者の状況)
離職をとりまく現状
世界的に見ると日本の離職率は比較的低いですが、終身雇用が崩壊し、多様な働き方が求められている現在は、離職や転職に対してマイナスなイメージが少なくなりました。そのため、将来的に離職や転職する人が増加していくことが予想されます。
実際に、株式会社マイナビが発表した調査※6によると、「転職は前向きな行動である」という問いに対して、「そう思う」と答えた人の割合は70%近くに及び、3年連続で増加していることが明らかになりました。
給与、やりがい、企業の将来性などが退職するメジャーな理由に挙げられますが、転職はより良い職場環境を目指すための手段として一般化してきています。
参照※6 転職動向調査2021年版
企業の離職率が高いとどうなるのか
企業の離職率が高いと、以下のような影響が懸念されます。
• 採用・育成コストが増える
• 企業のイメージがダウンする
• 採用問題が悪化する
それぞれのリスクについて、詳しく確認していきましょう。
採用・育成コストが増える
人材の募集から面接、研修に至るまで、新卒を雇用して育成するのには多額の費用がかかっていますが、企業の離職率が高いと、採用・育成コストが増加する可能性があります。
社員が離職してしまうと人材を補うため、採用から育成まで再度行う必要があり、離職率が高ければ高いほど、より多くの採用・育成コストが必要になるのです。また、せっかく育成した社員が離職してしまうと、研修などにかけたコストが無駄になってしまいます。
売上を拡大できたとしても、採用・育成コストで出費が多いと利益率が悪くなってしまうため、効率的に収益を上げることができません。
企業のイメージがダウンする
離職率が高いと、企業に対してのイメージが悪くなる恐れがあります。離職率が高いということは、「従業員にとって働きにくい職場環境である」と捉えられてしまうからです。
例えば、給与や労働時間、テレワークの有無、有休消化などの体制が整っていない、従業員がやりがいや成長を感じられないという印象を与えてしまいます。
働き方改革が叫ばれている現在、従業員が働きやすい環境であることは、企業の将来性を判断する上で重要なポイントです。そのため、企業に対して悪いイメージを持たれてしまうと、株価が低下するなどのリスクが生じます。
採用問題が悪化する
企業に対してネガティブなイメージを持たれてしまうと、採用問題が悪化する可能性があります。離職率が高く、働きにくい環境である会社にわざわざ応募する求職者は多くないでしょう。
採用活動が困難になってしまうと、優秀な人材を確保できずに、将来的な会社の成長が見込めません。また、人材不足が懸念される今後、採用活動はより難しくなってしまいます。
そのため、離職率の高さを課題に感じている企業は、改善を目指すことが大切です。
離職率を上げないためには
離職率を課題に感じている企業は、どのように改善を目指せばいいのでしょうか。離職率を上げないための方法として、以下の項目が挙げられます。
• 採用時にミスマッチを無くす
• 社内の風通しをよくする
• 人事評価制度を再考する
• 働き方改革を推進する
それぞれの改善方法を以下で確認して行きましょう。
採用時にミスマッチを無くす
企業と求職者間のミスマッチを無くすために、採用時に会社について理解を深めてもらうことが大切です。会社についてよく知らない状態で入社してしまうと、入社前と入社後でギャップが生じ、離職に繋がる可能性があります。
実際に、アデコ株式会社が実施した調査※7では、「あなたが新卒として所属した企業もしくは団体を、3年以内で退職した理由は何ですか?」という問いに対して、「自身の希望と興味のミスマッチ」という回答が37.9%を占めていることが分かりました。
採用時のミスマッチを減らすために、求職者のキャリアプランにとって自社が最適な環境であるかをポイントにすることが大切です。さらに、自社のアピールポイントを伝えるだけでなく、リアルな働き方を理解してもらえるように工夫する必要があります。
参照※7 転職動向調査2021年版
社内の風通しをよくする
社内の風通しをよくすると、離職率を改善できる可能性があります。自分の意見が伝わりやすく、個人の意思が尊重される職場は、従業員が働きやすいと感じるためです。
社内の風通しが悪い企業では、上司と部下間でのコミュニケーションが行われにくく、働きやすい雰囲気を作り出すことができません。
フラットなコミュニケーションを促進し、従業員が働きやすい雰囲気を目指すためには、部署やチーム内のリーダーが重要な役割を担います。部下と積極的に面談の時間を設けるなどして、個人の意見をヒアリングする機会を設けましょう。
人事評価制度を再考する
離職率を改善するには、人事評価制度を再考することが大切です。従業員が「正当な評価を受けられない」と感じてしまうと、従業員の不満が募ってしまい、離職する可能性が高まります。
従業員が納得できるように、KPIなど客観的な指標に基づいて評価を行いましょう。また、どのように評価しているか分かりやすく従業員に提示することが重要です。
さらに、評価体制に不満を抱えている従業員に対して、意見をヒアリングする機会を設けると良いでしょう。
働き方改革を推進する
離職率を上げないために、働き方改革を推進するようにしましょう。働き方改革とは、従業員が多様な働き方を選べる環境を作ることを目的としている、厚生労働省が提唱した概念です。
育児や介護などの家庭的事情で、離職をする人の割合が多いことが問題視され、働き方改革が重要視されるようになりました。
企業としても、個人がそれぞれの状況に応じて働ける環境を整備することで、従業員の職場への満足度を上げることができます。テレワークや、フレックスタイム制、時短勤務などを導入して、従業員が柔軟に働ける環境を目指しましょう。
まとめ
今回の記事では、離職率の高さを課題に感じている企業に向けて、離職率の現状や改善方法を解説しました。現在の時点で、新卒社員における就職後3年以内の離職率が30%を超えています。さらに、終身雇用が崩壊し、離職や転職へのハードルが低くなっており、今後も離職率は増加していくでしょう。しかし、離職率が高いと、採用・育成コストが増加するだけでなく、企業へのイメージが悪くなる可能性があります。そのため、採用時のミスマッチを減らし、働き方改革を推進するなど、離職率を改善するためのアクションを起こすことが大切です。
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